【インタビュー:ライフネット生命保険株式会社様】生成AIで“攻め”、アドベリフィケーションで“守る”。オンライン生保のパイオニアが描く次世代デジタル戦略とは
(写真左から)
Momentum株式会社
セールスグループ VP of Customer Success 水野 雄介、VP of Sales 新原 良太
ライフネット生命保険株式会社
データサイエンス推進室 橋詰 青弥 様
マーケティング部 原山 陸 様
マーケティング部 部長 渡邊 慶 様
インタビューについて
生命保険業界において、デジタルマーケティングは事業成長の重要なドライバーである一方で、「企業の信頼を守ること」が何よりも優先されます。不適切な広告配信は、企業ブランドに直結する経営リスクです。
今回インタビューを行ったライフネット生命保険株式会社(以下:ライフネット生命)様は、広告運用の内製化や生成AIの積極活用といった先進的な取り組みを進める一方で、広告の健全性を担保するためにMomentumのサービスを活用し、リスク対策にも取り組んできました。
本記事では同社がどのようにして「効率」と「信頼」を両立させ、次世代のデジタル戦略を描いているのかをご紹介します。
ライフネット生命について
ライフネット生命について教えてください。
ライフネット生命は、2008年に開業したインターネット専業の生命保険会社です。「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」をマニフェストに掲げ、デジタルを活用した新しい保険のかたちを追求してきました。
顧客との接点の多くがオンラインである当社にとって、デジタルマーケティングやデジタル広告は事業成長を支える中核的な機能です。特に、近年では広告運用の内製化を進め、データに基づいた迅速な意思決定体制の構築に取り組んでいます。
また、2024年には自社開発した社内用生成AI(社内用LLM)の本格運用を開始し、導入から2か月で152時間の業務削減(※1)を実現しています。なお、現在では社員の約9割(※2)が業務に生成AIを活用。マーケティングや業務プロセスの高度化を押し進めています。
(※1)参照:ライフネット生命株式会社 プレスリリース【 ライフネット生命保険 社内用生成AIの利用率は87%となり社員の生産性向上を実現 導入から2ヶ月で利用者の業務時間を計152時間削減 】
(※2)参照:ライフネット生命株式会社note【 社内向けAIサービスの開発者が語る! 生成AI導入を推進した3つの戦略|ライフネット生命保険株式会社 】
広告運用の内製化と生成AI活用の背景
広告運用の内製化を進められた背景を教えてください。
通常コスト削減を目的としての内製化が多いかと思います。当社も、お客さまから預かっている保険料から営業活動をしている以上、なるべくコストを削減して運用したいという思いも強く持っています。ただ一番の目的は、顧客のことを知っている当社自らの手でマーケティングを推進し、ナレッジを蓄積することにありました。
生命保険は広告の表現などにも厳密なルールがあり、マーケティングにおいて何かを実行するにあたって時間がかかる業界です。
その中で、「市場や商材を一番理解しているのは自分たち」という考えのもと、代理店任せにするのではなく、自分たちで広告のPDCAを回し、自社にノウハウを蓄積することで新たな取り組みを行うことが大事と考えています。
AI活用と内製化の組み合わせで、どのような変化を感じていますか?
仮説検証のスピードが格段に上がりました。時間を要していたデータの抽出やレポーティングが、生成AIの活用によって効率化され、より本質的な示唆の抽出や改善施策の立案に時間を割けるようになりました。結果として、分析・改善サイクルが大幅に短縮でき、広告投資の精度も着実に向上しています。
また、運用の内製化によって、広告配信データと事業戦略がより密接に結びつくようになりました。数値の変化をリアルタイムで把握し、その背景を社内で議論しながら意思決定できる体制が整ったことは、とても大きな成長だと感じています。
一方で、デジタル活用が高度化し、広告配信面が広がるほど「その配信面が本当に健全であるか」という視点の重要性も増しています。高速でPDCAを回せるようになったからこそ、前提となるデータが正確でなければ判断そのものが歪んでしまう可能性があるからです。
広告の種類や量を増やすほど、基盤となる広告の健全性をいかに担保するかが重要になるため、攻めの強化と同時に守りの精度を高める必要性をより強く感じるようになりました。

信頼を守るためのアドベリフィケーション
総務省ガイダンスの公表をどのように受け止められましたか?
デジタル広告市場の健全化に向けた明確なメッセージとして受け止めました。当社としても広告の安全性は以前から重視していましたが、総務省から改めて基準が示されたことには大きな意味があると感じています。
生命保険は「安心」を前提に成立する商品です。不適切なコンテンツに広告が配信された場合、単なる広告効果の問題ではなく、企業の信用にも影響を及ぼしかねません。総務省ガイダンスをきっかけに、マーケティングの現場だけでなく経営レベルでもこのリスクをしっかりと認識することができました。
アドベリフィケーション対策を強化した理由は何でしょうか?
広告運用の内製化を進める中で強く感じたのが、「意思決定の前提となる広告配信環境をより精緻に整える必要性」でした。生成AIの活用や分析体制の高度化によって、仮説検証のスピードは確実に上がっています。しかし、その基盤となる広告配信データに不正トラフィックや不適切な配信面が混在していれば、どれだけ高度な分析を行っても判断そのものが歪んでしまう可能性があるのです。
また、炎上系やセンシティブな社会的テーマ、ネガティブなニュースとの接触は、私たち保険業界にとっては大きなブランドリスクです。生命保険は 「安心」を感じていただいて初めて成り立つ商品である以上、広告の掲載環境そのものが企業価値に直結してしまいます。
広告運用の内製化で様々な施策を実行するにあたり、デジタル広告の品質を担保するための基盤作りが大事だと考えました。
Momentumのリスク対策を導入した決め手と効果
導入の決め手
JICDAQによる第三者認証(※3)を取得している国産のサービスであり、信頼性が担保されていることが導入の決め手でした。
また国内のメディア環境に最適化されている点もメリットだと考えています。例えば炎上したYouTubeチャンネルには広告を出したくないと考えていますが、そのような対応を即座に行なってもらえるのは、国産サービスならではの強みだと感じています。
(※3)参照:一般社団法人 デジタル広告品質認証機構【JICDAQ認証制度について】
実務面での変化を教えてください。
リストの更新性が高く、インハウス運用の中でも無理なく組み込める点に大きなメリットを感じています。これまでは配信面の精査に一定の時間と労力がかかっていましたが、HYTRA DASHBOARDのリストを活用することで、その確認・更新作業が大幅に効率化されました。
常に最新のブロックリストをもとに運用できるため、「気づかないうちにリスクのある配信面に掲載されていた」といった不安が軽減され、運用担当者の心理的な負担も下がっています。リスク管理に過度な工数を割く必要がなくなり、本来注力すべき分析や改善業務に時間を充てられるようになりました。
その結果、不要な配信を抑制しつつ、効果の出やすい環境へ広告投資を集中できる体制が整いました。単なるブロック機能ではなく、広告運用の質そのものを底上げする仕組みとして活用できていると感じています。
また、「正しい広告配信データに基づいて意思決定できている」という安心感も大きな価値だと感じています。生成AIによる業務効率化と、アドベリフィケーションによる安全性の担保が組み合わさることで、分析・改善・判断の一連のプロセスがよりスムーズになり、結果として組織全体の生産性向上にも寄与しています。

今後の展望について
今後、広告運用やデジタル戦略をどのように進化させていきたいとお考えですか?
生成AIの活用をさらに高度化させながらも、その前提となる「広告の健全性」はより強固なものにしていきたいと考えています。
AIによって分析や改善のスピードは確実に向上していますが、テクノロジーの進化そのものが企業の信頼を保証してくれるわけではありません。むしろ、デジタル活用が加速する時代だからこそ、「どのような姿勢で広告を届けているのか」という企業の在り方が問われるようになっています。効率や成果だけを追うのではなく、社会やお客さまに対して誠実であり続ける仕組みを整えていくことが、私たちにとって非常に重要なのです。
デジタル活用をさらに進化させる一方で、リスク管理を前提とした運用体制を当たり前のものとして定着させていきたいと考えています。
最後に、導入を検討している企業へのメッセージをお願いします。
問題が起きてから対策を講じるのでは、遅いと感じています。 ひとたび不適切な配信が発覚すれば、広告の成果以前に企業やサービスそのものへの信頼が揺らいでしまう経営リスクとなる可能性があります。その影響は、短期的な数値では測れないほど大きいものです。
アドベリフィケーション対策は攻めと守りを両立させるための基盤として、何かが起きてからではなく「何も起きていない今」の段階から取り組むことを強くおすすめします。

今回お話しを伺ったのは…
ライフネット生命保険株式会社
オンライン生保のリーディングカンパニーとして、デジタルテクノロジーを活用しながら、「安心して、未来世代を育てられる社会」の実現を目指します。
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