「生成AI×デジタル広告の未来」勉強会レポート
2026年2月26日、MomentumはACP/PCP認定パートナー企業様向けに「生成AI×デジタル広告の未来」と題した勉強会を開催しました。
ACP/PCP認定パートナー制度についてはこちら:https://www.m0mentum.co.jp/partner
本勉強会では、企業向けAI研修・導入コンサルティングを手がける株式会社デジライズ代表の茶圓将裕氏をゲスト講師にお招きし、生成AIの基礎から広告業界への実践的な活用方法、そして今後の未来予測まで、約1時間半にわたって講演いただきました。
Momentumでは、広告主のブランド価値を毀損する恐れのあるWebサイトやアプリ、YouTubeチャンネルのリストをHYTRA DASHBOARDで提供し、広告主のブランド価値を高めています。生成AIの普及により広告クリエイティブの大量生産が可能になる一方、AIを悪用した著作権侵害コンテンツやアドフラウドが急増しているという市況の変化を受け、パートナー企業の皆様に最新の知見を共有するため、本勉強会を企画いたしました。
生成AIとは何か?基礎から理解する
茶圓氏はまず、生成AIの仕組みを丁寧に解説しました。AIは1950年代から存在し、現在は「第4次ブーム」とも言われる時代に突入しています。その中で「生成AI」はAIの一部であり、「AIイコール生成AI」ではない点を強調しました。
生成AIの最大の特徴は、ゼロからコンテンツを新しく生み出せる点にあります。従来のAIが「AというインプットにはBというアウトプット」という固定的な処理しかできなかったのに対し、生成AIはまるで後ろ側に人間がいるかのように、テキスト・画像・動画・音声など多様なコンテンツを生成できます。
仕組みとしては「文字を予測するシステム」であり、大量のテキストを学習した結果として次の言葉を予測して出力します。そのため、元の学習データが誤っていれば回答も誤る可能性があるという限界も正直に伝えられました。
代表的なツールとしてChatGPT・Gemini・Copilot・Claudeが紹介され、個人の入門にはChatGPT、法人利用にはGeminiやCopilotが推奨されました。特にChatGPTは月間ユーザー8億人・43億アクセスを誇る世界最大の生成AIサービスとなっており、最新モデルは東大入試に合格するレベルの知能を持つと言われています。
生成AIがデジタル広告にもたらす変革
広告業界における生成AIの活用領域として、茶圓氏は「クリエイティブ制作」「広告運用」「分析・リサーチ」の3つを挙げました。
クリエイティブ制作の革新
画像生成においては、GoogleのGeminiを使えばYouTubeサムネイルやブログのアイキャッチ程度であれば専門家なしに数分で制作できるレベルに達しています。また、実在しない架空の人物をリアルな写真のように生成することも可能です。
動画生成についても、ByteDance(TikTokの親会社)が開発した「Seaweed」が話題を集めており、テキスト入力だけでなく画像・音声・動画など複数の素材を組み合わせて、まるで映像監督のように動画を制作できる時代が到来しています。
さらに、自分の動画を15分ほど学習させることで、テキストを入力するだけで本人そっくりに話すクローン動画を生成できるツールも実用段階に入っており、茶圓氏自身がYouTube発信にすでに活用していると紹介しました。
広告運用の自動化
AIが担えるようになった広告業務として、以下が挙げられました。
業務領域 | AIが担える内容 |
| クリエイティブ制作 | バナー・動画の量産・サイズ展開・A/Bテスト素材生成 |
| コピーライティング | キャッチコピーの多案生成・多言語対応 |
| 広告運用 | 入札・予算配分の自動最適化 |
| 分析・レポート | 広告データの分析・レポート自動生成 |
一方で、AIが生成した無数の案の中から「ブランドの格に合うものを選定する」という意思決定や、ブランドのストーリー・世界観の構築は、依然として人間にしかできない領域であると強調されました。
「コピーコンテンツは無数に作れますが、企業のブランドストーリーやインフルエンサーの個人的な歴史は模倣できません。人間らしさ、ストーリー、世界観づくりに専念していくことが、これからの広告人に求められる役割です。」(茶圓氏)
生成AI活用の「光と影」:リスクと向き合う
Momentumが捉える市況の変化
勉強会の前半では、Momentum代表よりアドベリフィケーション観点での市況報告が行われました。HYTRA DASHBOARDのデータによると、2024年8月からの1年間でアンセーフリストに追加されたサイト・チャンネルは2万4,000件(1日あたり約65件)に上り、その内訳として著作権侵害コンテンツが前年比で顕著に増加していることが報告されました。
これはAIを使って著作権侵害コンテンツを大量生産し、広告収益を不正に得るという手口が急増していることを示しています。また、CTVやオーディオ広告でのアドフラウドが海外で拡大しており、日本でも同様の被害が今後増加する可能性が指摘されました。
ディープフェイクとなりすまし詐欺
茶圓氏は、生成AIの「影」の部分として、ディープフェイクを使ったなりすまし詐欺の深刻化を取り上げました。有名人の顔・声・動画を無断で使用した偽の広告がSNS上で拡散され、消費者が金銭的被害を受けるケースが急増しています。
画像だけでなく音声クローニングも容易になった現在、「社長になりすましたAI音声で従業員に振込を指示する」といった企業を標的にした詐欺も増加しています。
著作権と法規制の現状
著作権については、「既存の著作物と類似したものを生成・商用利用することはアウト」という基本原則を解説。OpenAIがディズニーと正規ライセンス契約を結んでクリーンにキャラクターを使用できる一方、ByteDanceのSeaweedがウェブ上のデータを無断学習して訴訟を起こされているという対照的な事例も紹介されました。
AI規制については、EUのAI規制法やアメリカのディープフェイク削除法案など各国で対応が進んでいますが、「法律の整備速度よりも詐欺側の進化スピードのほうが何倍も速い」という現実も率直に語られました。
企業がAIを導入するための5つのステップ
茶圓氏は、500社以上・延べ3万5,000名以上へのAI研修実績をもとに、企業がAIを効果的に導入するための具体的なステップを紹介しました。
| ステップ | 内容 |
| 1. 汎用ツールの導入 | ChatGPT・Gemini・Copilotなど汎用AIツールを「一社に一台」導入し、 日常業務で触れる環境を整える。 |
| 2. 研修の実施 | Iの基礎知識・プロンプトエンジニアリング・セキュリティ・著作権に関する研修を行い、 マインドセットとスキルセットの両面を育成する。 |
| 3. 業務の分解と適用 | 自社の業務プロセスを細かく分解し、どの工程でAIを活用できるかを特定する。 「AIの知見がない」だけでなく「自分の業務を言語化できていない」ことがAI活用の壁になっている。 |
| 4. 点から線への自動化 | まず個別業務(点)でのAI活用を習得し、 その後プロセス全体(線)の自動化へと段階的に進める。 |
| 5. 推進チームの組成 | 100名規模を超えたら社内にAI推進の専任チームや窓口を設け、 継続的な活用とナレッジ共有を促進する。 |
特に「まず触ってみること」の重要性が繰り返し強調されました。GMO社での導入事例では、AI活用率が6%から94%へと向上し、月間38.4時間の業務削減を達成したという実績も紹介されました。
質疑応答
講演後には参加者からの質疑応答が活発に行われました。
Q. 生成AIによってバナーや広告テキストの大量生産が容易となりましたが、その中から本当に成果の出る価値あるクリエイティブを見極めるプロジェクトにおいて、AIはどこまで使えますでしょうか?
A. 最終的な判断は人間が行う必要がありますが、過去の広告データ(クリエイティブと成果の紐づき)が蓄積されていれば、AIにそのデータを学習させることで新しいクリエイティブの成果をある程度予測することは可能です。AIには視覚的な分析能力もあるため、データに基づいた提案をAIに任せることは十分に考えられます。クリエイティブの結果をしっかり蓄積していくことが、AI活用精度向上の鍵となります。
Q. プロンプト生成の習熟はどのように行えばいいですか?
A. 参考となる優れたクリエイティブをAIに読み込ませ、「これを真似して作って」「この作り方を教えて」と指示するのが効果的です。既存の作品をベースにプロンプトを調整していくことで求めるアウトプットに近づけることができます。また、良いアウトプットが出たら「このアウトプットを一撃で生成できる汎用プロンプトを作って」とAI自身に作らせる方法も推奨されました。試行錯誤の中で生まれた良いプロンプトを保存・汎用化していくことが上達の近道です。
Q. 社内の提案ナレッジや各種情報が部署ごとに分散しており、検索や収集に毎回時間を要します。AIを使ったナレッジ基盤を作る際のおすすめの構成を教えてください。
A. 利用しているツールによりますが、SlackやGoogle Workspace(Gmail・Google Driveなど)であれば、ChatGPTやClaudeなどのAIツールと連携させることで、分散した情報を横断的に検索・抽出することが比較的容易にできます。特定の資料群であれば、NotebookLMなどのツールにデータを読み込ませて活用するのも有効です。SalesforceなどメジャーなSaaSツールであれば大体連携できるため、まずは既存ツールとの連携から始めることをお勧めします。
Q. AIの自動最適化が強くなっていく中で、広告代理店が存在価値を出すにはどうすればよいですか?
A. 広告代理店の価値は「営業力」にあると考えます。AIによってサービスの品質が平均化されていく中で、いかにリードを獲得し、クライアントとの関係を構築するかが競争優位の源泉になります。一方で、クライアント側から見れば、AIで裏側の業務が効率化されることで利益率が改善するというメリットもあります。AIをうまく活用することで、より少ないコストで高い成果を出せる体制を整えることが重要です。
Q. 生成AIにおける著作権侵害が話題になっていますが、今後著作権者の収益はどのように守られていくのでしょうか?
A. 著作権侵害コンテンツを生成・商用利用することは現行法でもアウトです。ライセンス契約(OpenAIとディズニーの事例のように)を結んで正規利用するか、著作権フリーの素材を使うことが基本となります。生成した画像や動画の商用利用可否については、各ツールの利用規約を確認することが重要です。法整備は進んでいますが、AIの進化スピードに追いつくのは難しい状況が続くと予想されます。
参加者の反応
質疑応答では5件以上の質問が寄せられ、参加者の関心の高さが伺えました。特に「クリエイティブの品質管理」「プロンプトの習熟方法」「社内ナレッジ管理へのAI活用」といった実務に直結するテーマへの関心が高く、講演後のアンケートでは個別相談を希望する声も多数ありました。
講演中には参加者からのリアクション機能を通じた反応も活発で、生成AIによるクローン動画のデモや、AIが数分でプロンプトを自動生成するライブデモには特に大きな反響がありました。
まとめ
本勉強会では、生成AIがデジタル広告業界にもたらす変革の全体像と、実践的な導入アプローチについて深く掘り下げられました。
生成AIは広告クリエイティブの制作・運用効率を飛躍的に高める可能性を持つ一方、著作権侵害コンテンツの大量生産やディープフェイク詐欺といったリスクも同時に拡大させています。Momentumが提供するHYTRA DASHBOARDのデータが示すように、AIを悪用した不正コンテンツは1日65件ペースで増加しており、ブランドセーフティの観点からも生成AIへの正しい理解が不可欠です。
企業がAIを安全かつ効果的に活用するためには、まず汎用ツールを「一社に一台」導入して日常業務で触れる環境を作り、研修を通じてリテラシーを高めることが第一歩です。そして業務を細かく分解してAIを適用できる工程を特定し、点での効率化から線での自動化へと段階的に進めていくことが成功の鍵となります。
AIに任せられる作業は自動化し、人間はブランドストーリーの構築・クリエイティブの最終意思決定・クライアントとの関係構築など、より付加価値の高い業務に注力していくことが、これからのデジタル広告において重要となるでしょう。
今回お話しを伺ったのは…
株式会社デジライズ 代表 茶圓 将裕 氏
企業向けAI研修・導入コンサルティングを手がける株式会社デジライズ代表。500社以上・延べ3万5,000名以上へのAI導入支援実績を持つ。Xフォロワー18.2万人、年間160件以上の登壇実績を誇るAI活用の第一人者。
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