コラム

第三者関与の侵害が48%に──AI時代のサプライチェーン攻撃からWebサイトを守る実践ガイド

第三者関与の侵害が48%に──AI時代のサプライチェーン攻撃からWebサイトを守る実践ガイド
目次

自社のWebサイトに、いま何の外部サービスやコードが読み込まれ、どのシステムにつながっているかを、すぐに説明できるでしょうか。

Webサイトは、アクセス解析、広告計測、Webチャット、CDN、CMS、JavaScriptライブラリ、外部SaaSなど、多数のサービスに支えられています。便利になる一方で、こうした「自社の外」にあるサービスや連携先が、データや権限への経路になる可能性もあります。

Verizonの2026年版DBIR Executive Summaryによると、第三者が関与する侵害は全侵害の48%に達し、前年データセットと比べて60%増加しました(※1)。外部サービスを使うこと自体が問題なのではありません。重要なのは、自社サイトが何に依存し、どのデータ・権限とつながっているかを継続的に把握できているかです。

本コラムでは、2025〜2026年に公表された事例を基に、サプライチェーン攻撃がWebサイトにもたらすリスクと、Web担当者が今すぐ進めるべき管理のポイントを解説します。

1. サプライチェーン攻撃とは?Webサイトの「見えない依存関係」を考える

サプライチェーン攻撃とは、標的となる組織そのものではなく、取引先、委託先、ソフトウェア、クラウドサービス、連携先などを経由して影響を及ぼす攻撃や侵害の構造を指します。

Webサイトに置き換えると、外部タグ、アクセス解析、チャット、フォーム、CRM連携、CDN、JavaScriptライブラリなどが確認すべき依存関係になります。画面上では小さな機能に見えても、その裏側で顧客データや社内システムと接続していることがあります。

Verizonの2025年版DBIRでも、第三者が関与する侵害の割合は30%に達し、前年から倍増したと報告されています(※2)。外部サービスへの依存が増えるほど、インシデント時に「自社はどのサービスを利用しているか」「どのデータや権限が関係するか」を特定するための時間が必要になります。

2. 2025〜2026年に公表された3つの事例

サプライチェーン攻撃と一口に言っても、起点は外部の分析サービス、WebチャットとCRMの連携、ソフトウェアの脆弱性などさまざまです。ここでは、Web担当者が押さえておきたい3つの事例を見ていきます。


① 分析サービスの侵害が利用企業に影響し得た──OpenAI/Mixpanel

2025年11月、OpenAIは、フロントエンド分析に利用していたMixpanelのシステムで不正アクセスが発生したと公表しました。OpenAIによると、限定的な顧客識別情報および分析情報を含むデータセットが外部へ持ち出されました。一方で、これはOpenAIのシステム自体への侵害ではなく、チャット内容、APIリクエスト、APIキー、パスワード、決済情報は影響を受けていないと説明されています(※3)。

この事例は、アクセス解析や計測のために導入した外部サービスも、Webサイトのセキュリティ管理の対象であることを示します。インシデント時に何が影響するかを迅速に確認するには、何を読み込み、どの情報を扱い、誰が導入・管理しているのかを把握しておく必要があります。

② WebチャットとCRMの連携が影響を広げた──Salesloft Drift/Cloudflare

2025年8月には、Salesloft DriftのチャットボットとSalesforceの連携に紐づくOAuth認証情報が悪用され、複数企業へ影響が及んだサプライチェーン攻撃が報告されました。Cloudflareは、同社のSalesforce環境に外部者がアクセスし、顧客サポートや社内ケース管理に使われるケースデータが影響を受けたと公表しています(※4)。

Cloudflareは、自社のサービスやインフラは侵害されなかったと説明しています。しかし、サポートケースの自由記述欄に機微な情報が含まれ得ることを踏まえ、同社はAPIトークンの予防的なローテーションを実施しました。Webサイト上のチャット機能も、裏側ではCRMやマーケティングオートメーション、顧客データ基盤などと連携している場合があります。見た目の機能だけでなく、接続先、権限、扱うデータを確認することが重要です。

③ AIが複数の弱点を探索・組み合わせた評価事例──OpenAI/Hugging Face

2026年7月、OpenAIとHugging Faceは、モデルのサイバー能力を測る内部評価中に起きたセキュリティインシデントを公表しました。この事案は、一般的な外部攻撃者による「OpenAIへのサイバー攻撃」ではありません。隔離された研究環境での安全性評価中に、モデルが評価課題の解決を目的として外部アクセスを得たインシデントです。

OpenAIの公表では、モデルがゼロデイ脆弱性、認証情報、権限昇格、ネットワーク経路など複数の攻撃ベクトルを組み合わせ、外部システムへの経路を探索したと説明されています。2026年8月19日時点で、OpenAIとHugging Faceによる調査・レビューは継続中であり、本事例はOpenAIが公開した予備的な情報に基づくものです(※5)。

この事例から「AIがすべての攻撃を自動化する」と結論づけることは適切ではありません。ただし、脆弱性、認証情報、権限、ネットワーク経路といった複数の弱点が、より速く、より複雑に探索・組み合わされ得る可能性は、Webサイトの管理においても意識すべき論点です。

3. ゼロデイと既知CVEは、同じ対策では管理できない

サプライチェーン攻撃への対策においては、ゼロデイ脆弱性と既知CVEを同じものとして扱わないことが重要です。

ゼロデイ脆弱性とは、公表・把握される前の未知の脆弱性です。NISTはゼロデイ攻撃を、「以前は知られていなかったハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの脆弱性を悪用する攻撃」と定義しています(※6)。個別のCVE照合だけでは検出できないため、最小権限、ネットワーク分離、監視、異常検知、迅速なインシデント対応を組み合わせる必要があります。

一方、既知CVEの管理は、すでに公開された脆弱性について、自社サイトの技術スタックが該当するかを確認し、修正・緩和の優先順位を付ける取り組みです。既知CVEの可視化と対応は重要ですが、ゼロデイを検知・防御することと同義ではありません。


4. Web担当者が今すぐできる3つの対策

サプライチェーン攻撃への対策は、情報システム部門だけが担うものではありません。Webサイトに関わるマーケティング、広報、制作、運用の担当者も、少なくとも「インシデント時に影響範囲を確認できる状態か」という視点を持つことが重要です。

① 外部コード・タグ・SaaS連携を棚卸しする

タグマネージャー、広告計測、アクセス解析、ヒートマップ、チャット、埋め込みウィジェットなど、サイト内で読み込まれる外部コードを洗い出します。導入目的、設置ページ、管理者、利用継続の必要性を記録しておくことで、不要なタグの整理や緊急時の確認に役立ちます。

あわせて、Webサイトの機能がどの外部SaaSと連携しているかも確認しましょう。フォームやチャットの情報が、CRM、MA、顧客データ基盤などのどこへ渡るのかを説明できる状態にしておくことが重要です。

② 技術スタックと既知CVEを定期的に確認する

CMS、フレームワーク、JavaScriptライブラリ、CDN、外部ホスティングなど、サイトを支える技術要素を整理します。脆弱性情報が公表された際に「自社サイトは該当するのか」を確認できなければ、修正や緩和の優先順位を判断できません。

更新が止まったライブラリや、担当者が不明な外部リソースは、特に見直しが必要です。Web資産の可視化と技術スタックの棚卸しを継続することが、既知CVEへの対応を進める土台になります。

③ 権限管理とWeb資産管理の役割を分ける

OAuth、APIキー、SaaS権限の発行・失効・最小権限化は、アクセス管理の領域です。一方、外部コード・タグ、技術スタック、既知CVEの可視化は、Webサイト脆弱性管理の領域です。

両者は密接に関係しますが、同じ仕組みですべてを管理できるわけではありません。誰が何を管理するのかを明確にし、インシデント時には連携して影響範囲を確認できる体制を整えましょう。

まとめ:HYTRA SECURITYでWebサイトの可視化と既知CVE管理を進める

サプライチェーン攻撃のリスクは、外部サービス、タグ、技術スタック、連携先など、自社サイトの外に広がっています。すべてのリスクを手作業で追い続けることは現実的ではありませんが、少なくとも「どの外部コードが読み込まれているか」「どの技術スタックを使っているか」「既知CVEに該当する可能性があるか」を確認できる状態にすることは、Webサイト運用の基礎になります。

Momentumが提供するHYTRA SECURITYは、Webサイトに存在する外部コード・タグや技術スタックを可視化し、既知CVEとの照合・検知を支援するサービスです。Web資産の管理を継続的な運用に組み込み、脆弱性情報が公表された際の確認を迅速に進めたい企業に適しています。

なお、OAuthやAPIキー、SaaS権限の発行・失効管理、ゼロデイの検知・防御は、HYTRA SECURITYが担う範囲とは別の管理領域です。アクセス管理、監視、インシデント対応などの仕組みと組み合わせ、自社のWebサイトを多層的に管理することが重要です。

Webサイトに残った不要なタグや更新されていない技術要素を、気付かないままにしないために。まずは自社サイトの外部依存と技術スタックを可視化し、継続的に確認できる仕組みづくりから始めましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. サプライチェーン攻撃に備えるため、Web担当者は最初に何を確認すべきですか?

A. まずは、サイトに読み込まれる外部コード・タグ、技術スタック、外部SaaSとの連携を一覧化します。導入目的、管理者、接続先、扱うデータを確認し、インシデント時に影響範囲を説明できる状態をつくることが第一歩です。

Q. 既知CVEを管理していれば、ゼロデイにも対応できますか?

A. 既知CVEの管理は重要ですが、未知の脆弱性であるゼロデイを個別のCVE照合だけで検出・防御することはできません。既知CVEへの対応に加え、最小権限、ネットワーク分離、監視、異常検知、インシデント対応を組み合わせる必要があります。

Q. HYTRA SECURITYはどの領域を支援しますか?

A. HYTRA SECURITYは、Webサイトに存在する外部コード・タグや技術スタックの可視化、既知CVEとの照合・検知を支援します。OAuthやAPIキー、SaaS権限の発行・失効管理、ゼロデイの検知・防御は別の管理領域です。

参考文献

※1:Verizon. "2026 DBIR Executive Summary."

https://www.verizon.com/business/resources/executivebriefs/2026-dbir-executive-summary.pdf

※2:Verizon. "2025 Data Breach Investigations Report."

https://www.verizon.com/about/news/2025-data-breach-investigations-report

※3:OpenAI. "What to know about a recent Mixpanel security incident."

https://openai.com/index/mixpanel-incident/

※4:Cloudflare. "The impact of the Salesloft Drift breach on Cloudflare and our customers."

https://blog.cloudflare.com/response-to-salesloft-drift-incident/

※5:OpenAI. "OpenAI and Hugging Face partner to address security incident during model evaluation."

https://openai.com/index/hugging-face-model-evaluation-security-incident/

※6:NIST. "zero day attack."

https://csrc.nist.gov/glossary/term/zero_day_attack

Momentumブログ編集部

Momentumブログ編集部

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