Webアクセスの53%がBotに 広告費を狙う組織的アドフラウドと、広告主が確認すべき4つの兆候
「クリック数は伸びているのに問い合わせに繋がらない」「コンバージョン数は足りているはずなのに、案件化や売上に結びつかない」——Web広告を運用する中で、このような違和感を覚えた経験はないでしょうか。
入札設定やターゲティング、クリエイティブやLPの見直しはもちろん不可欠ですが、もう一つ見落としがちな視点として「そのアクセスやクリックは、本当に人間によるものなのか」があります。
セキュリティ企業のThalesが発表した「2026 Bad Bot Report」によると、2025年に観測された全Webトラフィックのうち、Bot(自動プログラム)によるアクセスが53%を占め、人間によるアクセス(47%)を上回りました。いまやWeb上のトラフィックの過半数が、人ではなくプログラムによって発生しているのが実態です。[1]
Botには検索エンジンのクローラーなどの良性なものも含まれるため、すべてのBotが悪質なわけではありません。しかし、広告の表示やクリックなどを不正に発生させて広告費を詐取する悪質なBotによる被害が拡大しており、こうした不正行為は「アドフラウド」と呼ばれています。総務省公開の広告主向けガイダンスでも、Botやスパムコンテンツを用いて無効な広告表示やクリックを生み出す手口への注意が呼びかけられています。[2]
Botによる無効なインプレッションやクリック、偽のコンバージョンが発生すると、広告媒体側はそれらを「成果が出ている」と誤解してしまいます。その結果、本来届けるべきユーザーではなく、アドフラウドが発生している特定の配信面に優先して広告が配信され続けてしまうリスクがあります。
本記事では、Botが主流となったWeb環境において、アドフラウドが広告主のビジネスにどのような悪影響を与えるのか、そして自社の広告データから不審な兆候をどのように見つけ出すべきかを分かりやすく解説します。
Webアクセスの半数以上が人ではない時代に
Thalesの「2026 Bad Bot Report」によると、2025年に観測された悪性Botは全Webトラフィックの40%。2024年の37%から3ポイント増えました。人間によるアクセスの割合は2019年の63%から2025年には47%へ低下しています。[1]
また、Momentumが提供する「HYTRA HORNET」の全利用クライアントデータを対象とした独自調査によると、2026年1月〜6月の半期におけるアドフラウドの平均発生率は3.19%でした。さらに、最もアドフラウド率が高い特定媒体に絞った場合、平均14.35%もの不正トラフィックが検知されており、媒体や配信面によって被害のリスクに大きな偏りがあることが分かっています。
アドフラウドは組織的犯罪として実行されている
アドフラウドは、単なる個人的なイタズラや一部の不正クリックにとどまりません。デジタル広告取引の複雑な仕組みを悪用し、国際的な犯罪組織がサーバー群やマルウェア、偽サイトを駆使して巨額の広告費を組織的に騙し取るケースも確認されています。
組織的・計画的な不正広告の代表例として、米司法省などの捜査によって全貌が明らかになった大規模な事案が挙げられます。例えば、「Methbot」や「3ve」といった事件では、高度な技術を用いて人間の挙動を緻密に模倣し、巨額の広告費が不正に搾取されました。[3][4]
事件名・主たる手口 | 実行規模・偽装技術 | 被害額・摘発結果 |
|---|---|---|
Methbot | ●2,000台以上のデータセンターサーバ | ●被害額:700万ドル超[3](日最大500万ドル規模の推計も[6]) |
3ve | ●マルウェア感染した170万台以上のPC | ●被害額:2,900万ドル超 |
このように、こうした不正行為は単なる数値のズレではなく、企業の広告予算を直接標的にした計画的なサイバー犯罪です。対策を怠れば、本来届くべき顧客へアプローチする予算がそのまま犯罪組織へと流出することになります。
広告主が失うのはクリック費だけではない
アドフラウドは、表面的なクリック数の増加だけでなく、効果測定や配信の最適化にも深刻な悪影響を及ぼします。次の図は、不正なサイト内行動が入札の最適化対象として計測された場合の模式図です。

不正なサイト内行動が、広告主の設定した最適化対象のコンバージョンとして計測された場合の概念図。偽クリックだけで自動的にマイクロCVとして学習されるわけではありません。[7][8]
- 成果に結びつかないクリックによる広告費の浪費
クリック課金型(CPC)やインプレッション課金型(CPM)の広告配信において、Botによる無効なクリックや表示が発生すると、本来アプローチすべきユーザーに届かないまま広告費が消費されてしまいます。特に高単価なキーワードや競争の激しい配信面では、意図しないクリックによって限られた広告予算が急速に圧迫されるリスクがあります。 - 偽コンバージョンによる評価と実態のギャップ
Botによる偽コンバージョンが発生すると、広告管理画面上ではCV数やCPAなどの数値が良く見えたとしても、実際の売上やビジネス成果には結びつきません。管理画面上の表面的な成果のみで判断せず、実際の成果に繋がっているかを定期的に検証することが重要です。 - 配信アルゴリズムの誤学習と予算配分の歪み
Botによる無効なインプレッションやクリック、偽のコンバージョンが発生すると、広告媒体側はそれらを「成果が出ている」と誤認してしまいます。その結果、本来アプローチすべきユーザーではなく、不正が発生している特定の配信面に優先して広告が配信され、貴重な予算が偏って投資されてしまうリスクがあります。
「Bot=不自然な大量アクセス」とは限らない
Thalesは、2025年に観測した悪性Botトラフィックの41%がChromeブラウザを名乗っていたと報告しています[1]。米司法省が摘発したMethbot事件でも、ブラウザやマウスの動きを人間らしく見せる手口が確認されています[3]。
モバイル広告の不正を分析した研究によると、アドフラウドは通常のトラフィック量の変動に合わせて不正アクセス量を調整しています。具体的には、人によるアクセスが少ない時期にBotの活動を活発化させることで、全体のアクセス数を平坦化(平均化)させ、管理画面上の異常な突出を目立たなくさせる巧妙な隠蔽手法がとられています。さらに、警戒が強まりやすいキャンペーン開始直後や終了間際を避け、検知の目が緩みやすい「中盤」に不正を集中させる傾向も報告されています。このように全体量や期間の中に不正を巧妙に紛れ込ませているため、単に「アクセスが急増した日」だけを監視していても、日常のトラフィックに溶け込んだアドフラウドを見落としてしまう危険性があります。[10]
自社の広告データで確認したい4つの兆候
自社運用アカウントにおいて、アドフラウドの影が潜んでいないかを点検するための4つの重要チェックポイントを整理しました。
セッション数は増えたが、問い合わせ・案件数が連動していない
アクセスログや広告管理画面でセッションが急増しているにも関わらず、実質的な問い合わせや商談化数が伸びていない場合、無効トラフィックの流入が疑われます。滞在時間や離脱率、使用デバイスなどのセグメント分析を行いましょう。
CTRの上昇に対して、CVRや成約率が著しく下落している
クリエイティブの改善によりCTRが高まるのは好ましいことですが、それに反比例してCVRや商談化率が極端に落ち込んでいる場合は注意が必要です。誤クリックの誘発や、Botによる機械的な自動クリックが混ざっている可能性があります。
CV数は順調だが、商談化・受注に繋がる「質の高いリード」が得られない
資料請求やフォーム送信などのCV数は確保できているものの、実在しない連絡先や無効な内容が目立つ場合は、フォームスパムを伴うアドフラウドを疑う必要があります。SFA/CRMと連携し、商談化率・受注率までブレイクダウンして評価することが不可欠です。
特定の配信枠・時間帯・地域・端末からの挙動が不自然に偏っている
特定の広告媒体や夜間帯、ターゲット対象外の地域、あるいは特定のOS・端末スペックからのアクセスが急増しているケースがあります。セグメント別の異常値を定期的にチェックする習慣を付けましょう。
ただし、これらの兆候を日常的に手動でチェックし続けるには手間や工数がかかります。そのため、専用ツールを活用して監視や判別を自動化し、効率的にデータの質を保つのもおすすめです。
HYTRA HORNETで流入の質を確認する
Momentumの「HYTRA HORNET」は、サイトへの流入を解析してBotなどの不正ユーザーを特定するアドフラウド対策サービスです。検知したユーザーを広告プラットフォームの除外オーディエンスに設定し、広告による再訪問を防ぐ仕組みです。不正なBot、ユーザーの流入を防ぐことで広告費の適正な利用につながります。
自社広告の流入状況が気になる場合は、診断方法や費用についてMomentumにご相談ください。無料診断の現在の実施状況も、問い合わせ時に確認できます。
そのクリック、本当に「人間」の反応ですか?
Thalesの観測では2025年の全Webトラフィックの53%がBotでした。[1]
しかし、管理画面上の表面的な数値だけでアドフラウドの可能性や無効なアクセスに気づくことは困難です。そのため、クリック数だけでなく実際の問い合わせや売上につながっているかを精査する必要があります。
とはいえ、巧妙化する不正トラフィックを自力だけで正確に判別・対策するには限界があるため、専用のアドフラウド対策ツールを活用した継続的なトラフィック監視が重要になります。
巧妙化・組織化するアドフラウドに無防備なままでいると、無駄なコストの発生や歪められたデータに基づく誤った意思決定を招くため[4][5]、流入トラフィックの「質」を冷静に見極め適切な対策を講じることが求められます。
よくある質問
Q.Webアクセスの53%が、すべてアドフラウドという意味ですか?
A.いいえ。Thalesの調査における53%には、検索エンジンのクローラーなどの良性Botも含まれており、あくまでWebトラフィック全体の数値です[1]。
ただし、「すべてが悪質なアドフラウド(詐欺)ではないから影響がない」というわけではありません。悪意のある不正なBotはもちろんのこと、悪意のない自動アクセスであっても、広告のインプレッションやクリックを発生させることでデータ分析や配信の最適化に大きなノイズを与えます。結果として広告費の無駄や誤った意思決定を招くおそれがあるため、その影響を正しく認識することが重要です。
Q.広告媒体側が無効クリックを除外していれば、広告主側の対策は不要ですか?
A.いいえ、不要ではありません。Google広告などの媒体側もシステムによる無効クリックの自動除外を行っていますが、それだけですべての不正を防ぎきれるわけではありません[9]。
日々の管理画面に並ぶデータには、媒体の検知をかいくぐる巧妙なBotなどによるノイズが依然として含まれている場合があります。表面的な数字をそのまま信用して最適化や意思決定を行うと、誤った判断を招くおそれがあります。そのため、広告主側でもデータの歪みに気づくための多角的なチェックを行い、より確実な対策を進めるためには専門のアドフラウド対策ツールを活用した継続的な監視が不可欠です。
Q.自社広告に無効トラフィックが含まれているか、どう確認できますか?
A.流入元やキャンペーン別に、クリックやCVR、CPAだけでなく、有効商談率、成約率、ROASまで見てください。特定の流入元や時間帯に偏りがあれば、フォーム内容やアクセスログも点検します。自社だけで判別しにくい場合は、HYTRA HORNETを使った確認方法についてMomentumにご相談ください。
参考文献
[1]Thales, 2026 Thales Bad Bot Report: Bad Bots in the Agentic Age
https://cpl.thalesgroup.com/resources/application-security/2026-bad-bot-report
[2]総務省「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」
https://www.soumu.go.jp/main_content/001013697.pdf
[3]U.S. Department of Justice, Russian Cybercriminal Sentenced to 10 Years in Prison for Digital Advertising Fraud Scheme
https://www.justice.gov/usao-edny/pr/russian-cybercriminal-sentenced-10-years-prison-digital-advertising-fraud-scheme
[4]U.S. Department of Justice, Two Kazakh Cybercriminals Plead Guilty in Global Digital Advertising Fraud
https://www.justice.gov/usao-edny/pr/two-kazakh-cybercriminals-plead-guilty-global-digital-advertising-fraud-involving-tens
[5]U.S. Department of Justice, United States Recovers Over $15 Million from Swiss Bank Accounts as Proceeds of Global Digital Advertising Fraud Scheme
https://www.justice.gov/usao-edny/pr/united-states-recovers-over-15-million-swiss-bank-accounts-proceeds-global-digital
[6]The New York Times, Russian Cyberforgers Steal Millions a Day With Fake Sites
https://www.nytimes.com/2016/12/20/technology/forgers-use-fake-web-users-to-steal-real-ad-revenue.html
[7]Google Ads Help, About Smart Bidding
https://support.google.com/google-ads/answer/7065882?hl=en
[8]Google Ads Help, About primary and secondary conversion actions
https://support.google.com/google-ads/answer/11461796?hl=en
[9]Google Ads Help, About invalid traffic
https://support.google.com/google-ads/answer/11182074?hl=en
[10]Mobile ad fraud: Empirical patterns in publisher and advertising campaign data
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S016781162300068X
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